【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
 いつの間にか、周りとの気まずい雰囲気はなくなっていた。主任のくだらない愚痴なのかノロケなのかわからない話に助けられた。

(みんな、普通に接してくれている。良かった)

 あれは主任なりに私のことを考えての話題だったことに気がついた。

 そういえば社長はどこに行ったのだろう。クリーンルームまでは付いてこないみたいだ。周りに牽制を終えたので、仕事に戻ったのかもしれない。

 貴富さんはその後、クリーンルームには入ってこなかったが、仕事の合間を見つけては、ことあるごとに私に会いに来た。でも仕事の邪魔にならないようにという配慮なのか、笑顔で手を振ってすぐに帰っていく。

 そんな日々が数日続き、周りも私も呆れながらもだんだん慣れてきた。

 他社に行っている時は来ないので、寂しい気持ちよりもちょっと安心してしまう気持ちもある。それくらい貴富さんの溺愛ぶりは周囲も認めるほどのものだ。

 微笑ましい、というよりも苦笑、と表現した方がいい。
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