【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
「話ってなに?」

 貴富さんは少し不安気な様子で伺うように言った。私は大きく息を吸って、とても大事なことを告げた。

「子どもができました」

「え?」

 貴富さんは驚いた顔をして、言葉の意味を考えこんだ。

「子どもとは、あの子どもですか?」

「はい」

 あの子どもってなんだろう。どの子どものことを言っているのだろう。

「つまり、俺と芳美の愛の結晶が、芳美の子宮に宿ったということか?」

「そ、そうですね」

 いや回りくどいな。愛の結晶なんて、研究者らしからぬロマンチックな表現だ。

 貴富さんは感慨深げに天井を見上げた。なんとなく目が赤くなっているように見える。

 貴富さんは事実を噛みしめるように押し黙っているので、だんだん不安になってくる。

 喜びを噛みしめ、感動しているように見えるけれど、どうなのだろう。すると、天井を見上げていた貴富さんは、今度は深く頭を下げた。

「芳美、ありがとう」

 心から感謝している様子が伝わってきて、なんだか私もつられて涙が浮かんできた。
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