【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜

　でも今回は違う。見た目で印象が左右される場において、化粧は身を守る盾となる。それに、恥ずかしい話だが、貴富さんに可愛いと思ってもらいたいという欲もあった。

　貴富さんの実家は、超がつくほどの高級住宅街にあるという。

　足を踏み入れたこともない街並みに入って行く。静かな通りに立ち並ぶ緑豊かな高台に、高いフェンスに囲まれた庭園が豪華な植栽で彩られている。

　街全体に豪華な邸宅が並び優雅な雰囲気を漂わせている。圧巻の光景に思わず息を飲む。憧れの気持ちよりも、怖いという気持ちの方が先立つ。あまりにも住む世界が違う人たちとなにを話せばいいのだろうか。なにを話しても嘲笑されそうで、会う前から卑屈な気持ちがわき上がってしまう。

　高級住宅街の奥に突き進むと、モダンなデザインの黒鉄の門の前で車は停まった。門の上部には紋章が刻まれていた。門の横に設置されていた監視カメラが車を捉え、センサーに反応した重厚な門が自動で開いていく。