【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜

　門をくぐると緑豊かな庭園が広がっていて、美しく整備された白い石畳の道を車は進んでいく。豪奢な邸宅の前には、大きな噴水が静かに水しぶきを上げていて、まるで映画やドラマのロケ地に訪れたかのような光景だった。

（想像を超えてきた）

　いくつも会社を保有している藤堂家財閥。

　日本は財閥が少ないけれど、その数少ない財閥の中でも最高峰に位置しているのが藤堂寺家だ。

　だから当然、もの凄い豪邸なのだろうなとは思っていた。とはいっても土地が狭い日本だ。海外のような豪邸が建つ広さはない、と思っていたのに。

　高級住宅街の中でもひと際大きく豪華な邸宅だった。これは、異次元すぎる。

（私がここに嫁ぐなんて無理じゃない？）

　悠斗君は庶民が藤堂寺家と結婚するのは難しいと懸念を口にしていた。

　まあ、そりゃそうだろうと思っていたけれど、ここまで住む世界が違うとは。

　恋愛結婚が主流となった現代で、家柄だのなんだの言っているのは物語の世界くらいかと思っていたけれど、物語に出てくるような豪邸が目の前に現れたので、考え方を改めなければいけないのは私の方だと気がついた。