【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜

「芳美、そんなに青ざめなくても大丈夫だよ」

　私の異変に気がついた貴富さんが慌てて声をかける。

　顔が引きつって返事もできない。

　車を車庫に停め、外に出る。車庫には輝きを放つ高級車が何台も停まっていた。

「大丈夫。俺が守るから」

　不安そうな顔をしている私の手を貴富さんが握った。結婚したいと思っているのは貴富さんだって一緒だ。怖いけれど、乗り越えなくては。

　邸宅の中に入ると、大理石の床が足元を迎え、高い天井にはシャンデリアが煌めいていた。

（靴のまま入るのか）

　まるで海外の邸宅だ。豪邸の中には、アート作品やオシャレな古美術が飾られ、調度品だけで驚くような額がしそうだ。

　数人の家政婦が手を止め、頭を下げて私たちを迎い入れると、執事らしき男性が奥へと案内してくれた。

　年輩の穏やかで品のある執事と貴富さんは懐かしそうに談笑しながら歩いて行く。豪邸の中はもの珍しい物ばかりだったけれど、あまり周囲を見ては失礼に当たると思って、大人しく貴富さんの後ろについていった。