【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜

　リビングから出てきたのは、ダンディな雰囲気ながら、柔和な眦の男性だった。この方が貴富さんのお父様であると一目でわかった。

「おかげさまで。そっちは？」

　貴富さんは思春期の男の人みたいに、口数少なめで距離のある言い方だった。

「いやそれがさ、この前ゴルフに行った時のことだけど、そこで吉田がさ、あ、吉田ってお前も一度会ったことある建築会社の社長な、そいつがさ……」

　いきなりのマシンガントーク。内容はよくわからないけれど、楽しそうに話している。おそらく、久しぶりに息子に会えて嬉しいのだろう。

「ああ、うん、わかった。その話はあとで聞くからまずは座らせてくれ」

　貴富さんはお父様の話を面倒くさそうに遮った。

「おお、そうだった。芳美さん、よく来てくれたね。座ってゆっくり休むといい。あまり無理しないように」

　お父様は笑顔で私に言った。

（あれ……なんか私、歓迎されている？）