【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜

　こんな場違いな世界に踏み入れて、罵倒されて塩でも投げられるのを覚悟して来たのに、貴富さんのお父様とお母様はとても優しい方だった。

　リビングに案内されると、その広さと豪華さに驚いた。高級そうな絨毯が床を飾り、広々とした室内には豪奢な家具が配置されていた。天井には大きなシャンデリアが煌めき、窓からは温かな陽光が差し込んでいる。そして、煉瓦の暖炉では薪が煌々と燃えていた。

　大きなダイニングテーブルには、真っ白なリネンのランナーがテーブルを飾り、その真ん中には見事な生け花が飾られている。執事が椅子を引いてくれたので座ると、そこからは高級ホテルのレストランのように次々と美味しい食事が提供された。

　会話は楽しく和やかで、結婚と妊娠を祝福してくれているのが伝わってきた。

　緊張して身構えていたのに、呆気に取られる。安心して自然な笑顔が出るようになった頃、事態は急変した。やはり、世の中そんなに甘くない。

「貴富、来ているなら先に私に挨拶に来るのが礼儀じゃなくて？」

　叱責するような力強い声に、場の空気が一瞬で凍りつく。