【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
「学会発表にどうしても選ばれたくて、毎日必死になって数種類の研究を同時進行していたら、偶然上手くいったのです」

「偶然でも凄いことだ。なにせ新薬の開発の成功率は約25000分の1なのだから」

 そう、新薬開発はそんなに簡単なことではない。

 一般的な学生の卒業論文は、ほとんどが一種類の研究だけしかしない中、数種類の研究を手掛けていた私は、徹夜の日々を送っていた。でも、努力や時間をかければ成し遂げられるほど甘い世界でもなく、私はたんに運が良かったのだ。

「開発に成功したとはいっても、既存の薬の遺伝子の一部を変えただけです。内容的には単純で、有効性や安全性がほぼ証明された上での一部の変化なので、臨床試験や承認申請も一般的な新薬よりも早く許可されました」

 早く許可されたということは、それだけ単純な作り変えで、新しさはなかったということだ。

 ただこの新薬発見によって、学会発表に選ばれることになったし、貴富さんの会社に入社することもできた。思い入れの強い薬が、まさか貴富さんのおばあ様の病気にも役立つかもしれないとは、運命のようなものを感じる。
< 221 / 247 >

この作品をシェア

pagetop