【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
 それは、少しだけ理解することができる。なぜなら私も、貴富さんの発表を聞くまでは、学生勧誘のために出たのかなと思っていたからだ。

「でも貴富さんの発表は、専門家も唸るほどの知識に溢れていました! 凄く感動的でした!」

 私は必死の熱量で、いかに貴富さんのスピーチが素晴らしかったのかを伝えた。だって、あのスピーチで私の人生は変わったのだ。

「ありがとう。俺もあの発表は時間をかけて準備したものだったから、そう言ってもらえると嬉しいよ。ただ、あの発表のあと、医師会に嫌われてしまって、会社に多大な迷惑をかけてしまったから、あれから学会に出ることをやめた。研究もあまりやらず、経営に全力で取り組むようになった」

 貴富さんの影のある空笑いを見て、大変だったのだろうなということが伝わってきた。

(無念、だったのかもしれないな)

 貴富さんの情熱が伝わらず、誤った方に悪く捉えられ、揚げ足取りをとられる。出る杭は打たれるというけれど、若く有能な経営者は老獪な者たちにとっては目障りだったのかもしれない。
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