【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
「貴富さん」

 マグカップを置いて、貴富さんに甘えるように抱きつく。温もりを味わうと、幸せな気持ちで満たされる。

「私は今、脳の視床下部からセロトニンとオキシトシンが分泌されています」

「幸せホルモンか。俺も変だが、芳美も変わっているよ」

「大丈夫です、自覚はあります」

 貴富さんも私の背中に手をまわし、首筋に顔を埋めた。

「俺の脳内からもセロトニンとオキシトシン、さらにドーパミンとエンドルフィンも分泌されているようだ」

「代表的な四つの幸せホルモンですね」

「ああ、ドーパミンとエンドルフィンは、やる気と高揚感を高める。つまり、俺は今、発情しているということだ」

 貴富さんは首筋に埋めていた顔を上げ、飢えた瞳で私を捉えた。

 私の頬に手を当て、ゆっくりと目を閉じながら顔を近づけていく。柔らかな唇が触れ、幸せホルモンはさらに分泌されていく。

 重なり合った唇は、角度を変え、音を立てる。

 幸せな時間は、それから長く続いた。

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