【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
 (はああ、近い!)

 肩と肩が触れ合うくらいの距離に社長がいる。肩を強張らせながら座っていると、社長が私の髪の毛をひと房すくって撫でた。

「まだちょっと、濡れていますね」

「あれ、ちゃんと乾かしたつもりだったのですが」

「頬も少し、赤い」

「はは、ちょっとのぼせちゃいました」

 ああ、なんだろうこの甘い雰囲気。社長から色気がダダ漏れで、近付くだけで酔いそうだ。

「素顔の方が可愛いね」

「はい⁉」

 驚いて社長の顔を見る。いつもスッピンに適当な服で、社内ではクリーンルーム用の白いつなぎを着て髪の毛も隠しているためか、可愛いなんて言われたこともない。

 むしろ女性として扱われることもないので、社長の言葉には嬉しさよりも戸惑いの方が大きい。
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