【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
 目が合うと、社長は照れる様子もなくにっこりと笑顔を浮かべた。

(悩殺スマイル!)

 輝くような美しすぎる笑顔に、目が眩んだ。男性にあまり免疫のない私には、刺激が強すぎる。

(いかん! 話題を変えなくては身がもたない!)

 周りを見渡すと、社長の読んでいた本に目がいった。

「これ、化学結合と浸透圧に関する最新の論文をまとめた本ですよね⁉」

「よく知っていますね。読んだのですか?」

「はい、まだ途中なのですけど、第二章の酸塩基平衡の分配係数に関するデータが興味深くて……」

 社長が驚いた顔で私を見ていたので、ハッと我に返る。つい興奮して喋ってしまったけれど、私は有紗という設定だったことを失念していた。

「驚いた、有紗さんは博識なのですね」

「大学で少しだけ習っていたので」

 これは嘘じゃない。有紗とはいつも一緒だったので、同じ講義を受講していた。まあ、有紗はあまり興味なかったみたいで、いつも寝ていたけれど。
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