【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
「でも私、こんな格好だし……」

 いきなり有紗から呼び出されたので、こんな展開になるとは思ってもみなかった。

 体の良い断り文句を言ったはずが、有紗は待っていましたとばかりに、得意気な笑みを浮かべた。

「大丈夫、手配は済んでいるわ」

 そして有紗に手を引っ張られて、ホテルのロビーから、更衣室へと案内された。

(え⁉ 私、一言も承諾するような言葉なんて言ってないのに!)

 更衣室には立派な赤の振袖が置いてあり、ご丁寧に着付け担当の人まで待機している。

 奥にはメイクルームもあって、準備は抜かりなく行われていた。

 あれよ、あれよという間に振袖に着替えさせられ、有紗はそれをご満悦な顔で眺めている。

「ねえ! 私が嫌だって言ったらどうする気だったの⁉」

 私の問いに、有紗は当然といった面持ちで返事をする。

「芳実ならやってくれると思ったわ」

(やられた)

 お互いにお互いを知り尽くしている。こうなったら有紗は、私が嫌だと言っても断行するし、そもそも私は有紗の頼みを断れない。
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