【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
  でも今回のことはいくら考えてもわからない。

 わからないけれど、きっと俺が悪いのだと思う。昔から他者の気もちに寄り添うということが苦手だった。大勢の人と賑やかに騒ぐよりも、ひたすら実験していた方が楽しかったりする。

 去る者追わず、というのが俺の行動指針だが、今回ばかりはそうはいかない。

 恋という感情を初めて知った。いつも彼女のことが頭から離れないし、会いたくて仕方がない。仕事をしていても彼女のことを思い出してしまう。

『付き合っているのに忘れるなんてありえない』

 と、昔付き合っていた彼女に言われたが、今ならその言葉がよくわかる。

 忘れるなんてありえない、頭から消えることなんて一瞬たりともない。

 彼女を思い出すだけで胸が切なく苦しくなる。彼女の全てが知りたいし、ずっと一緒にいたいし、ずっと触れていたい。

 嫌われたからって諦めることなど不可能だ。

 執着に似たこの感情は、まぎれもなく恋なのだろう。恋とはなんと罪深い感情なのか。

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