【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜

　　彼女は俺を見て、顔を引きつらせながら言った。

「藤堂寺貴富さん？」

「はい」

　名前を呼ばれたので返事をする。有紗さんのご姉妹だと思われる方は、みるみるうちに顔を真っ青にして口に手を当てた。

「あ～～、えっと、ここじゃなんだから外で話しましょう？」

　彼女は急にしおらしくなって、小首を傾げ、引きつった笑顔を見せた。

「いや、俺は有紗さんと……」

「いいから来る！」

「はい」

　凄い形相で睨まれたので、反射的に返事をする。腕を引っ張られながら家を出る俺たちを見て、ご両親は仲がいいわね、なんて微笑ましいものを見るような眼差しで見送った。

　家を出て数メートルほど歩いたところで、彼女は落ち着きなく辺りを見渡し、誰もいないことを確認してから口を開いた。

「あんたね、よく私の前に姿を現せたわね！」

　なぜだかよくわからないがとてつもなく怒っている。

「ちょっと待ってくれ。俺は有紗さんに用があって……」

「有紗は私よ！」

「は？」

　まぬけな様子で聞き返す。意味がわからない。