ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
 もう社長と会うことはないのだから、有紗にも内緒にしていれば余計な心配をかけずに済んだのに、結局一人では抱えきれなくなって泣きついてしまった。

 失恋がこんなに辛いものだなんて知らなかった。

 これは失恋なのか、なんなのか自分でもわからないけれど、好きな気持ちを封印して忘れなければいけない現状があまりにも辛すぎた。

 忘れたいのに、もう二度と会いたくないのに、なぜか偶然出会ってしまう。

 いつものように会社の食堂でお昼ご飯を食べていると、社長が普通に共有テーブルに腰かけて社食を食べていた。

 いつもはお付きの人が警護するように社長を囲んでいるのに、その日に限ってはたった一人だったから全然気がつかなかった。

 身長が高い人だな~と思って顔を見たら社長で、思わずコントみたいに椅子から滑り落ちた。

 もしも社内で社長と出くわした時用に、キャップを被っていたから座り直す時点で目深にし、猛烈な勢いで残りを食べ終えると、マスクをして逃げるように食堂を出た。
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