ご令嬢ではありません!~身代わりお見合いだったのに、敏腕CEOが執愛に目覚めたようです~
「それでは、失礼します」

 とへらへら笑いながらクリーンルームを後にした。

(あ~、緊張した。危機一髪!)

 あんなに近くで、しかも会話までしてしまったのに気づかれなくて、いいのか悪いのか複雑な心境ではある。

 着替え終えて外に出ると、日差しが眩しかった。

(あ~、なんか一気に疲れた。足元がおぼつかない)

 元々体調が悪かったのは事実だ。その状況で、二度も危機に晒されて心労が半端ない。

 ストレスで弱っているところに、さらに大きなストレスが加わったので、頭が混乱してグワングワン揺れているようだ。

(道路が、蜃気楼みたいに揺れ……て……)

 まずい、と思った時にはいつも遅い。

 小学校の朝会で校長先生の長い話を聞いていると、突然倒れる女子生徒がいることはよく聞く話だが、なにを隠そう私も倒れる系女子だった。

 私は歩道の真ん中で気を失った――

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