【改稿版】身代わりお見合い婚〜溺愛社長と子作りミッション〜
経営の仕事もやりがいがあるし、向いているとは思うが、一番の夢は研究者になることだった。

 誰からも憧れられる存在の俺が、目の前の彼らを少し羨ましいと思っているなんて知ったら世間は笑うだろうか。

 主任が戻ってきて、その数分後にクリーンウェアを着た若い女性社員が入って来た。

 入り口付近で主任と言葉を交わしている。

 帰るところだったのだろうか。小さい声で話していたので、会話は聞き取れなかった。

 彼女は俺に気がつかず、俺が質問をした最新機器を起動させた。

 起動には時間がかかるようで、彼女は落ち着かない様子で出入り口の扉を何度も振り返って見ていた。

 若い女性社員で研究員はそうはいない。この前、食堂で椅子から転げ落ちて、急いで昼食を食べていた子だろうか。華奢なのに、大口を開けて頬張っていたので印象に残っている。

 顔はこの前も見えなかったが、今もわからない。

全身クリーンウェアに身を包んだ彼女の後姿をじっと見つめた。体型もほとんどわからない仕様になっているのに、小柄で華奢なことは伝わってくる。
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