足湯と君は居場所【BLピュア】

第11話*会いたい、会えない。

*優斗視点

 あの日から黄金寺とは気まずくて、話せなくなった。目も合わせられなくて、背中しか見れない。キスされたのは正直驚いたし、嫌だった。だけどそれがきっかけで話せなくなるのはもっと嫌だ。

 きちんと話をした方がいいのかな? 
 いいよね?

 けれどそれがすごく難しい。

 同時に高瀬もお店に来なくなった。

 咲良ちゃんと紫音さんは来ていたから、咲良ちゃんがお菓子にあきたとか、そんな理由ではないと思う。高瀬、忙しかったりするのかな? 

 いつもは高瀬がお店に来て「ひょう花に行こう」って誘ってくれていたから、誘われないと行けなくて。ひょう花にも最近行ってない。学校では全く話をしないし……高瀬と話をしたいけど、赤井優斗としての僕は嫌われていそうだし。

 高瀬とひょう花に行っていた日々を思い出す。最近は行ってないのかな? ひとりで行ってたりする?

――それとも別の人と?

 僕ではない誰かが高瀬の隣にいて、ふたりでお湯に足を入れて、笑いあって……。

 ズキン――。

 別の人と一緒にひょう花へ行く高瀬を想像したら、心が痛くなった。 

 高瀬は僕を高瀬の一番お気に入りの場所へ、外へと連れ出してくれた。女装している時の僕にはすごく優しい高瀬。いつの間にか高瀬は僕にとって、一緒にいたい、特別な存在になっていた。

 一緒にいられなくなる想像をしたら胸が痛くなった。

 高瀬とひょう花で一緒に過ごしたい。
 高瀬と並んで、お湯に足を入れたいよ。

 僕の隣にいてほしい――。

 季節だけが暖かくなってくる。
 僕の心は大きな穴があいていて、冷たいまま。
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