足湯と君は居場所【BLピュア】
 戻ると高瀬がビニール袋を準備してくれていた。

「これに制服いれな」
「あ、ありがとう」

 場が落ち着くと、再び緊張してきた。
 制服を袋に入れたあとは、謝って、きちんと話をしないと――。

 ブレザーを袋に入れようとした瞬間、ブレザーのポケットでスマホのバイブが鳴った。

 忘れてた、ブレザーのポケットの中にスマホが入ってたんだった。スマホ、濡れなくてよかった。

 ポケットから出し、画面を確認するとばあちゃんからだった。

「もしもし、ばあちゃん、どうした?」
「あのね、ゆきちゃん、いなくなった……」
「えっ?」
「ゆきちゃんがね、家から出てって、いないの」

 震えるばあちゃんの声。

「分かった。待ってて今すぐ帰るから」

 急いでコートを着た。

「ごめん! 高瀬と真面目な話をしたいけど……帰る。本当にごめん」
「どうした?」
「……ゆきちゃんが、ゆきちゃんがいなくなったって。あんなに小さいのに、ひとりで雪の中にいるなんて。また雪の中でひとりぼっちに……」

 ぽつんとゆきちゃんが外にいて、震えている姿を想像するだけで泣きそう。

「赤井、待って? 俺も行く!」
 
< 46 / 53 >

この作品をシェア

pagetop