君の世界に触れさせて
◇
夕食の時間が終わると、父さんは風呂に入り、母さんは鼻歌を歌いながら皿を洗っている。
今日のザッハトルテを、父さんが完食したことが嬉しいらしい。
「父さん、今日のは食べれる甘さだったのかな」
食卓から、母さんが水を止めたタイミングで声をかける。
僕でも甘いと感じたから、小さかったとはいえ、父さんがすべて食べたのは意外だった。
「顔を顰めてたから、ちょっとだけ、無理してたんじゃないかな」
母さんはそのときの父さんの顔を思い出しているのか、クスッと笑う。
僕にはそんなふうには見えなかったから、母さんはよく父さんを見ているなと思った。
「栄治、無理するくらいなら、食べなきゃいいのにって思ったでしょ」
皿洗いが終わったようで、母さんは僕の前に座った。
母さんは僕の心を見透かした目をしている。
「いや、まあ……少しだけ」
誤魔化せないだろうから、本心を言おうとするが、はっきりとは言えなかった。
「私もね、美味しく食べてほしいから、無理しなくていいよって何回か言ったんだけど……大輔さんが、私が作ったものは全部食べてみたいって言ってくれてね」
また惚気けの時間だ。
察したのはいいけど、止めることはできなさそうだ。
夕食の時間が終わると、父さんは風呂に入り、母さんは鼻歌を歌いながら皿を洗っている。
今日のザッハトルテを、父さんが完食したことが嬉しいらしい。
「父さん、今日のは食べれる甘さだったのかな」
食卓から、母さんが水を止めたタイミングで声をかける。
僕でも甘いと感じたから、小さかったとはいえ、父さんがすべて食べたのは意外だった。
「顔を顰めてたから、ちょっとだけ、無理してたんじゃないかな」
母さんはそのときの父さんの顔を思い出しているのか、クスッと笑う。
僕にはそんなふうには見えなかったから、母さんはよく父さんを見ているなと思った。
「栄治、無理するくらいなら、食べなきゃいいのにって思ったでしょ」
皿洗いが終わったようで、母さんは僕の前に座った。
母さんは僕の心を見透かした目をしている。
「いや、まあ……少しだけ」
誤魔化せないだろうから、本心を言おうとするが、はっきりとは言えなかった。
「私もね、美味しく食べてほしいから、無理しなくていいよって何回か言ったんだけど……大輔さんが、私が作ったものは全部食べてみたいって言ってくれてね」
また惚気けの時間だ。
察したのはいいけど、止めることはできなさそうだ。