君の世界に触れさせて
「古賀、いかにも気になりますって顔をしながら、絶対に聞いてこなかったよね」
「だって、他人の過去なんて、簡単に聞いていいものじゃないじゃないですか」


 私だったら、知り合って間もない人に、根掘り葉掘り聞かれたくない。


 だから、気になっても聞けなかった。


「そうだね。だから僕は、古賀はただ素直にものを言う人じゃないと思うよ」


 唐突に、私が気にしていることに触れられて、反応に戸惑ってしまった。


「古賀は相手の立場になって考えられる、優しい人だよ」


 私自身はそんなことはないと思うのに、丁寧なお膳立てをされてしまったせいで、否定ができない。


 むしろ、先輩の強い眼差しに、そうなのかもしれないと思わされる。


 だけど、やっぱり過去に私に向けられた視線を思い出してしまって、受け入れられなかった。


「でも……怖いです。また失敗したらどうしようって、考えるだけで怖いです」


 私の声は、少しだけ震えていた。


 中学時代の知り合いはここには少ないはずなのに、誰かに見張られているような気分。


 さっきの清々しい気分が、どこかに消えてしまっている。


 空気が薄くなってきた気がして、若干、呼吸が乱れる。
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