君の世界に触れさせて
「僕も、また拒絶されたら……前みたいにみんなの和に入れなかったらどうしようって、怖かったなあ」


 対して、先輩の声は変わらず穏やかだった。


 本当に怖いと思っていたのだろうかと疑いたくなるくらい、落ち着いた声だ。


「でも案外、不安に思ったようなことにはならなかった。みんな、僕たちが思っているほど、僕たちのことに興味がない」


 励ましの言葉でも綺麗事でもなかった。


 ただの先輩の感想だからだろうか。


 その言葉は、自然と私の心に入ってきた。


「なにより、古賀が真剣に取り組む姿はちゃんとみんなに届いてるから、古賀が失敗しても、誰も責めないと思うよ」


 失敗をしたら、責められる。


 そんな記憶が強すぎて、私は信じられなかった。


「依澄」


 次の言葉を探していると、咲楽が階段を登ってきた。


「そろそろ試合始まるけど、行けそう?」


 その表情は心配を表している。


 申しわけなく思うと同時に、嬉しかった。


 私には、これほど心配してくれる人がいるのだと思うと、心強い。


 きっと、夏川先輩も私のことを心配して、ここに来てくれたのだろうし。


 こんなにも私の味方をしてくれる人がいるなら、大丈夫な気がしてくる。


 気持ちをリセットするように、大きく息を吸って、吐き出す。
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