君の世界に触れさせて
 うん、大丈夫だ。


 勢いのまま、立ち上がった。


「夏川先輩、私の活躍、見ててくださいね」


 先輩は驚いた顔をした後、笑顔を返してくれた。


「任せて。最高の写真を残すよ」


 先輩に写真を撮ってもらえる。


 それはつまり、先輩の世界に入れるということ。


 私が憧れた、明るい世界。


 プレイの記録が残ることは嫌なはずなのに、憧れた世界に入れてもらえるのだと思うと、嬉しくなる。


 だから私も、先輩に笑顔を返した。


 そして私は咲楽と一緒に、体育館に向かう。


「もう大丈夫そう?」
「うん。夏川先輩と話して、少しだけ気が楽になったというか、頑張れそうな気がしてきたから」


 私の言葉に咲楽が優しい笑顔を見せるから、私も自然と笑顔を返した。


 そして体育館に着くと、もうみんな集まっていた。


「古賀さん、氷野さん」


 柊木さんは私たちに気付くと、手を挙げた。


 その笑顔に誘われるように、柊木さんのところに行く。


「柊木さん、次の試合はどうするの?」


 咲楽が聞いたことで、私は自分が補欠であったことを思い出した。


「古賀さん、出る?」
「いや、でも……」


 出たいという気持ちはあるけど、出しゃばる気はなかった。


 すると、柊木さんはくすくすと笑った。
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