君の世界に触れさせて
 私よりも背が低い柊木さんは、私を見上げて優しく笑いかけてくれた。


「全力で応援してるね。頑張って」


 柊木さんの笑顔を見ていると、私は受け入れられたのだと思えた。


 柊木さんだけではない。


 私に拒絶するような視線を向ける人は、ここにはいなかった。


 たったそれだけのことなのに、私は泣きそうになる。


 柊木さんの言葉に答えられないでいると、咲楽が私の背中に触れた。


 咲楽の微笑みが、“よかったね”と言ってくれているような気がした。


「ありがとう。柊木さんの分まで、頑張るよ」


 そして前の試合が終わり、私たちはコートに入る。


 第一試合のときのより、気持ちが軽い。


「依澄、大丈夫?」


 だけど、さっきの試合では思いっきり停止してしまったから、咲楽の不安は消えていないらしい。


「意外と大丈夫。勝つことも大事かもしれないけど、今は大好きなバスケを、全力で楽しみたい」


 そう答えると同時に、試合開始を告げる笛が鳴る。


「ぶちかましてやろうぜ、親友」
「なにそれ」


 お互いに笑い合い、私たちはポジションにつく。


 そっと目を閉じて、ゆっくりと息を吸い、目を開いた。
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