君の世界に触れさせて
 いい緊張感だ。


 今回のジャンプボールは、私たちのチームが取った。


 咲楽の元にボールが行き、咲楽はドリブルで攻めていく。


 私はそのペースより少し速めに走り、ゴール下に向かった。


 空いている場所を探り、咲楽からパスを受け取る。


 失敗するビジョンは相変わらず過ぎる。


『古賀が失敗しても、誰も責めない』


 夏川先輩の言葉を信じて、私はボールを投げた。


 そのボールはゴールに弾かれた。


「依澄、もう一回!」


 素早くボールをキャッチした咲楽が、また私にボールをパスした。


 さっきのは惜しかったんだ。

 次は、大丈夫。


 自分に言い聞かせて放したボールは、今度こそゴールに吸い込まれた。


 咲楽は私に駆け寄ってきて、抱きついた。


「ナイスシュート」


 私は咲楽とハイタッチをする。


 ほかのみんなも喜んでくれていて、シュートは成功して当たり前という空気だった記憶が、塗り替えられていく。


 なんだか、わくわくしてくる。


「咲楽。ぶちかまそうか」


 楽しくなってきた私は、さっきの咲楽に言われた言葉と似たものを返す。


 咲楽はにやりと笑った。


 お互いにバスケに触れていなかった時期が長いから、現役時代のように動くことはできていない。


 それでも、最高に楽しかった。
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