君の世界に触れさせて
 スリーポイントシュートを狙ってみたり。

 その場の勢いで浅見さんを「由紀」と呼んでみたり。

 咲楽とスピードで無双してみたり。


 どんなことも楽しくて、気付けば失敗なんて怖くなかった。


 やっぱりバスケが好きだと再確認したこの試合の結果は、私たちの負けとなった。


「あと一点とか、悔しすぎる!」


 咲楽はコートを出ると、周りに気を使わずに叫んだ。


「でも、すごく楽しかった」
「私を呼び捨てにするくらい?」


 私に続けた浅見さんの言い回しは、少しだけ意地悪だった。


 一緒にバスケをした効果か、その意地悪に怯える私はいなかった。


「ごめんね、勢いでつい」


 そんな私たちのやり取りを見て、柊木さんが微笑んでいた。


「それくらい許してあげなよ、由紀ちゃん」
「そうそう。カリカリしないで、ユッキー」


 柊木さんに対して、咲楽はからかうつもりしかない言葉。


 咲楽らしい悪い笑顔だ。


「ほら、ユッキーは呼ばないの? 依澄って」


 咲楽が煽ると、浅見さんは堪えているように見えた。


 咲楽はますます楽しそうに、浅見さんをからかい始める。


「古賀、お疲れ様」


 それを微笑ましく思いながら見ていると、夏川先輩に声をかけられた。


「かっこよかったよ」


 その褒め言葉が嬉しくて、口元が緩む。
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