君の世界に触れさせて
 咲楽にとっては興味のないことなのは、わかる。


 だから、淡々と話すのは当然だと思う。


 でも、私にとってはどうでもいいことではなくて、その温度差に、思っていることを言っていいのか、わからなくなる。


「依澄ちゃん。自分に自信がないとダメっていうのは、私もわかるよ」


 柚木先輩でもそんなふうに感じていたのは、意外だと思いながら、続きを聞く。


「遥哉くんって、カリスマ性みたいなの凄いでしょ。他人を寄せ付けないオーラというか」


 私は正直に頷いた。


「だからね、遥哉くんに釣り合うような人にならないと、告白しちゃダメだって、勝手に思ってたの。みんなもそう思ってるだろうって、勝手に決めつけて」


 まさに私と同じ状況だった。


 私は真剣に、柚木先輩の話に耳を傾ける。


「でも、そんな暗黙のルールみたいなのを破って、遥哉くんに想いを告げた人がいたの。そのとき、目が覚めた。私の準備が整うのを、周りは待ってはくれないんだって」
「じゃあ、すぐに告白したんですか?」


 柚木先輩は首を横に振る。


 そして、困ったように笑みを浮かべた。


「怖くて、できなかった」


 柚木先輩は過去を思い返しているのか、そっと視線を落とした。
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