君の世界に触れさせて
「栄治くんは一人一人のいいところを見つけて、それを写すのが上手な人だから、余計に自信がついた。そしてこの写真をお守りに、私は遥哉くんに言えたの」


 柚木先輩に幸せな表情が戻る。


 前に見たときは可愛らしいとしか思わなかったけど、今は羨ましいと思った。


 私も、柚木先輩のように幸せになれるだろうか。


 いや、なりたい。


「そんなふうに言ってくれる栄治くんだから、きっと、不釣り合いだとか思わないはずだよ。まずは依澄ちゃんの素敵なところで勝負してみて、いいと思う」
「私の、素敵なところ……」


 自分ではわからなくて、呟いた次の言葉が出てこなかった。


「素直。笑顔。可愛い」


 すると、間髪入れずに咲楽が言った。


 咲楽が真剣に言うから、照れてしまう私がおかしいみたいに思ってしまう。


「そうだね。依澄ちゃんは、笑顔が素敵」


 柚木先輩が笑いかけてきて、笑顔を促されている気がしたけど、私は上手く笑えなかった。


 二人の視線から逃げるように、まだ口をつけていなかったカフェオレを飲む。


 氷が溶けてしまって、若干薄味になっていた。


「そうだ。依澄ちゃんは、栄治くんのどんなところが好きなの?」


 この照れくさい時間は、まだ続くらしい。
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