君の世界に触れさせて



 翌朝、スマホの目覚ましはいつもより一時間ほど早く鳴り始めた。


 普段起きる時間ではないから、まだ瞼が重たい。


 でも、まずは体を起こして目覚ましを止める。


 予定より五分遅い目覚めだけど、おおむね予定通り。


 ベッドを降りて、洗面所に向かう。


 昨日、咲楽たちに教えてもらった手順で洗顔をしていく。


 スキンケアと言われるものは、私にとって面倒なものだった。


 だけど、必要なことらしいから、言われた通りに進めていく。


 ここまでは覚えていたけど、メイクの手順までは覚えていない。


 スマホで咲楽とのトークルームを開き、手順を確認する。


 メイクをする前に、着替えるように注意書きがある。


 私は自室に戻って、制服に着替えた。


 自分の部屋にも手鏡があることを思い出し、ここでメイクをすることにした。


「あれ、今日は早いね。どうしたの?」


 ある程度道具が揃ったところで、部屋の外から声がした。


 ドアを開けっぱなしにしていたから、お母さんは驚いた表情で、そこに立っている。


「お母さん、おはよう」
「おはよう。それ、メイク道具?」


 わからないままにローテーブルの上に広げていたそれらを、お母さんは不思議そうに見る。
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