君の世界に触れさせて
『古賀依澄へ』


 青色の、可愛い表紙にそう書かれたリングノートが入っていた。


 ノートに見覚えがなくて、恐る恐る表紙をめくる。


「これ……」


 一ページ目に、私の写真が貼られていた。


 学校内で撮られたであろう、全力笑顔。


 このたった一枚で、誰が机に入れたのかわかってしまった。


「盗撮写真?」


 いきなり横から咲楽の声がして、私は体をビクつかせる。


 なんとなく、咲楽には見られたくなくて、ノートを閉じた。


 だけど、咲楽は文句を言わず、ニヤニヤと笑っている。


「……なに」
「別に?」


 咲楽は珍しくご機嫌で、私の前の席に座った。


「続き、見ないの?」


 促されて見るのは気が引けたけど、ノートの中身が気になって、私だけに見えるように開く。


 一枚目と同じような、背景が学校の写真が次々と出てくる。


 笑っていたり、真剣だったり。

 制服だったり、体操服だったり。


 バスケ部に参加している写真まである。


 めくればめくるほど、この中にいるのが私ではないような気がしてきた。


 でもやっぱり、夏川先輩が撮る私のことは、好きだ。


 というか、本当にいつの間に、こんなに撮っていたのだろう。
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