君の世界に触れさせて
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◆
「今日は夏川栄治のところに行かないの?」
放課後、自席でのんびりとしていたら、咲楽が空席となった私の前の席に座りながら、声をかけてきた。
肩あたりで自由に揺れる、不自然に黒い髪に、つい目がいってしまう。
高校生になっておしゃれに拍車がかかった咲楽は、登校初日から髪色を明るくしてきた。
一応、進学校と言われるこの高校では、髪を染めることは許されなかった。
ゆえに、咲楽は数日前に黒に染め直してきた。
高校生になってからのおしゃれを楽しみにしていただけに、今でも少し、不機嫌そうだ。
しかし、たとえ機嫌が悪くとも、先輩を呼び捨てするのは聞き捨てならない。
「夏川先輩ね。呼び捨てしない」
やっぱり膨れた咲楽の頬を見ながら、昨日の夏川先輩のことを思い返す。
カメラを見せたときの、先輩の表情。
「……先輩が写真に飽きたとか、そんな理由で写真部を辞めていたなら、もっと強く言えたんだけど……多分、先輩は私と同じ、だから」
好きなことを好きなまま、辞めなければならなくなった。
夏川先輩の、未練に染まった表情は、その苦しさを表しているようだった。
私は、その苦しみは痛いほど理解している。
だからこそ、無理強いはしたくないし、できない。
「今日は夏川栄治のところに行かないの?」
放課後、自席でのんびりとしていたら、咲楽が空席となった私の前の席に座りながら、声をかけてきた。
肩あたりで自由に揺れる、不自然に黒い髪に、つい目がいってしまう。
高校生になっておしゃれに拍車がかかった咲楽は、登校初日から髪色を明るくしてきた。
一応、進学校と言われるこの高校では、髪を染めることは許されなかった。
ゆえに、咲楽は数日前に黒に染め直してきた。
高校生になってからのおしゃれを楽しみにしていただけに、今でも少し、不機嫌そうだ。
しかし、たとえ機嫌が悪くとも、先輩を呼び捨てするのは聞き捨てならない。
「夏川先輩ね。呼び捨てしない」
やっぱり膨れた咲楽の頬を見ながら、昨日の夏川先輩のことを思い返す。
カメラを見せたときの、先輩の表情。
「……先輩が写真に飽きたとか、そんな理由で写真部を辞めていたなら、もっと強く言えたんだけど……多分、先輩は私と同じ、だから」
好きなことを好きなまま、辞めなければならなくなった。
夏川先輩の、未練に染まった表情は、その苦しさを表しているようだった。
私は、その苦しみは痛いほど理解している。
だからこそ、無理強いはしたくないし、できない。