君の世界に触れさせて
「古賀ちゃんがいると、栄治が写真を再開してくれる可能性が上がるから、そう言ってくれて嬉しいよ」


 それを聞いて、悪巧みではなかったことに、少しだけ安心した。


 そして、佐伯先輩も私と同じように夏川先輩の写真を楽しみにしているのだとわかり、仲間意識のようなものが芽生えた。


「佐伯先輩も、夏川先輩の写真が好きなんですか?」


 恐らく、佐伯先輩は“好き”というワードに戸惑いを見せた。


 照れているようで、視線を泳がせる。


「古賀ちゃんほど熱烈なファンってわけじゃないんだけど……栄治の写真見てるとさ、なんかこう、わくわくするじゃん?」


 私は大袈裟に頷く。


「あとは、カメラを持ってるときの栄治が、一番輝いてるから」


 佐伯先輩は懐かしそうに呟く。


 佐伯先輩の優しい表情を見ていると、私も、その姿を見たいと思った。


 夏川先輩が望まない欲が、次々と溢れてくる。


 満たされるかどうか怪しいだけに、もどかしい気持ちになる。


「じゃあ、日程とかはまたあとで連絡するから。それと、撮影会以外の約束が増えるかもしれないから、もしよかったら予定空けといて」


 佐伯先輩は慌ただしく、教室を出ていった。


 少しだけ顔が赤くなっていたから、きっと恥ずかしくなったのだろう。


「約束が増えるって、どういうことなのなかな」
「デートのお誘いだったりして?」


 咲楽は弾んだ声で言ったけど、そんな気配は微塵も感じられなかったから、私は同調できなかった。
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