君の世界に触れさせて
◇
ゴールデンウィーク初日、私と咲楽は電車に揺られていた。
窓際に座る咲楽は、退屈そうに欠伸をする。
「寝不足?」
「連休がやってくると思ったら、つい夜更かししちゃった」
咲楽は欠伸をもう一つする。
咲楽らしい理由に、つい笑みがこぼれる。
余程その夜更かしが楽しかったのか、咲楽は弾んだ声で一通りの報告をしてくれた。
簡単に言えば、ネットサーフィンから抜け出せなかったらしい。
あのブランドの化粧品が気になるだとか、可愛い服を見つけただとか、今日の髪型はやってみようって思ったものだとか。
私の理解が届かないおしゃれの話に、私は頷くことしかできない。
「それにしても、咲楽が撮影会に参加するなんて、思わなかった」
咲楽が満足したタイミングで、私は話を変える。
私がどれだけ夏川先輩の写真の話をしても、興味なさそうに相槌を打つだけだったから、余計に咲楽がここにいることが不思議だった。
「だって、人が少ない海だよ? 絶対映える」
悪いことを企むような顔をしているのに、可愛らしく見えてしまうのが、咲楽のずるいところだ。
「氷野ちゃんも写真撮るの?」
咲楽に質問を重ねたのは、佐伯先輩だった。
「私は完全にSNS用なので。自己満ってやつです」
佐伯先輩は咲楽の前へ、そして夏川先輩は若干気まずそうにしながら、私の前に座った。
ゴールデンウィーク初日、私と咲楽は電車に揺られていた。
窓際に座る咲楽は、退屈そうに欠伸をする。
「寝不足?」
「連休がやってくると思ったら、つい夜更かししちゃった」
咲楽は欠伸をもう一つする。
咲楽らしい理由に、つい笑みがこぼれる。
余程その夜更かしが楽しかったのか、咲楽は弾んだ声で一通りの報告をしてくれた。
簡単に言えば、ネットサーフィンから抜け出せなかったらしい。
あのブランドの化粧品が気になるだとか、可愛い服を見つけただとか、今日の髪型はやってみようって思ったものだとか。
私の理解が届かないおしゃれの話に、私は頷くことしかできない。
「それにしても、咲楽が撮影会に参加するなんて、思わなかった」
咲楽が満足したタイミングで、私は話を変える。
私がどれだけ夏川先輩の写真の話をしても、興味なさそうに相槌を打つだけだったから、余計に咲楽がここにいることが不思議だった。
「だって、人が少ない海だよ? 絶対映える」
悪いことを企むような顔をしているのに、可愛らしく見えてしまうのが、咲楽のずるいところだ。
「氷野ちゃんも写真撮るの?」
咲楽に質問を重ねたのは、佐伯先輩だった。
「私は完全にSNS用なので。自己満ってやつです」
佐伯先輩は咲楽の前へ、そして夏川先輩は若干気まずそうにしながら、私の前に座った。