君の世界に触れさせて
 結構強引なことをしてきたから、あまりよく思われていないんだろうとは感じていたけど、視線を合わさないようにされると、さすがに傷付く。


「こんにちは、夏川先輩」


 だからといって先輩を無視をすることはできなくて、私は笑顔を作る。


「……こんにちは」


 “それ以上は話しかけないで”


 そんな壁を感じさせるような言い方だった。


 お互いに言葉に迷い、なにも言えなくなる。


「夏川センパイは撮るんですか?」


 その空気感を壊してくれたのは、咲楽だった。


 少しありがたいと思いながらも、誰もが触れにくいところを遠慮なく触れてしまい、内心穏やかではない。


「いや、僕は」


 “撮らないのに、来たの?”


 咲楽の無言の圧から、そんな声が聞こえてきた気がした。


 夏川先輩もそう感じ取ったらしく、それより先を言わない。


「……佐伯の手伝いで来たから、撮らないよ」


 そして咲楽は、夏川先輩から写真に関わるという言葉を引き出した。


 私は反応したくて仕方なかった。


 でも、私がなにかを言って訂正されても困るから、必死に堪える。


「栄治、男に二言はないよな?」


 代わりに、佐伯先輩が肩を組み、確認をする。


 その表情には喜びが隠しきれていない。


 夏川先輩は嫌そうにしながらも「当たり前だろ」と答えた。
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