君の世界に触れさせて
夏川先輩の新しい写真を見れる日も近いかもしれないという事実に心が踊っているのに、私はその感情を押し殺した。
私がなにかを言えば、先輩は今の言葉をなかったことにしてしまいそうだったから。
電車が目的地に着くまで、私は先輩に意識を引っ張られながら、咲楽と佐伯先輩と会話をしていた。
電車を降りて五分程度歩くと、海が見えてきた。
「やば、海ってこんなに綺麗だっけ」
咲楽は軽く感動しながら、早速スマホを取り出した。
私も、咲楽と似たような感想を抱いた。
電車からは見えなかった、踏み荒らされていない砂浜と、静かに揺れる水面。
心地よい風が吹くと、穏やかな波音が聞こえ、潮の匂いがする。
夏がやってくる前の海はこんなにも綺麗だったのかと、軽く感動すらする。
「依澄は撮らないの?」
「うん……」
お母さんたちに入学祝いに買ってもらったデジカメは、カバンの中に入れてある。
それを取り出す気にならないのは、この美しい景色を、カメラに収められる自信がなかったからだ。
その変わり、しっかりと目に焼き付ける。
ただ立ち尽くして海を眺めていると、佐伯先輩たちの背中が視界に入った。
咲楽は律儀に待ってくれていたようで、私は咲楽と足を進める。
私がなにかを言えば、先輩は今の言葉をなかったことにしてしまいそうだったから。
電車が目的地に着くまで、私は先輩に意識を引っ張られながら、咲楽と佐伯先輩と会話をしていた。
電車を降りて五分程度歩くと、海が見えてきた。
「やば、海ってこんなに綺麗だっけ」
咲楽は軽く感動しながら、早速スマホを取り出した。
私も、咲楽と似たような感想を抱いた。
電車からは見えなかった、踏み荒らされていない砂浜と、静かに揺れる水面。
心地よい風が吹くと、穏やかな波音が聞こえ、潮の匂いがする。
夏がやってくる前の海はこんなにも綺麗だったのかと、軽く感動すらする。
「依澄は撮らないの?」
「うん……」
お母さんたちに入学祝いに買ってもらったデジカメは、カバンの中に入れてある。
それを取り出す気にならないのは、この美しい景色を、カメラに収められる自信がなかったからだ。
その変わり、しっかりと目に焼き付ける。
ただ立ち尽くして海を眺めていると、佐伯先輩たちの背中が視界に入った。
咲楽は律儀に待ってくれていたようで、私は咲楽と足を進める。