君の世界に触れさせて
 海辺に近寄っても、私は海に見惚れるばかりだった。


 一定のリズムで砂浜を濡らしていく透明な海水。

 太陽の光が反射する水面。空との境界線が曖昧な青い海。


 私はようやく、カメラを手にした。


 海にレンズを向けて、シャッターボタンを押す。


 上手く撮れた気がしない。


 それでも、案外綺麗に撮れたかもしれないと思って、今撮った写真を確認しようとするけど、やり方がわからない。


 誰かに聞こうにも、咲楽は貝殻探しに集中しているし、佐伯先輩と夏川先輩はなにか言い合いをしながら写真を撮っていて、聞けそうにない。


 私は不安を抱えたまま、もう一度、海を写真に残す。


 今度は水面を写して見たけど、また自信がなくて、不安になる。


 やっぱり写真を確認したくなって、私は傍でしゃがみ、貝殻を探す咲楽の隣に座る。


「ねえ咲楽、撮った写真ってどうやって見るかわかる?」


 咲楽は自分のスマホと私のカメラを交換した。


 咲楽が操作してくれている間、私は咲楽が作業していたものを見る。


 羨ましいくらい器用な咲楽は、貝殻で可愛らしいハートを作っていたらしい。


 隣からは先輩たちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


 私だけが、楽しめていない。


 そんな疎外感を感じてしまって、私は咲楽から受け取ったカメラで写真を確認しても、つまらないという気持ちでいっぱいになってしまった。
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