君の世界に触れさせて
3
◆
「よし、栄治。靴脱いで海に入れ」
波打ち際に近寄った途端、佐伯はいい笑顔で僕に命令した。
「嫌だよ」
撮影に協力するとは言ったけど、海に入るのは抵抗があった。
僕が即答するとわかっていたようで、佐伯は笑いながらカメラの準備を始める。
なにも持っていない僕は、ただ海を眺める。
穏やかな波を見ていると、ハル兄から逃げてきたことを忘れそうになる。
逃げたところで現実は変わらないのに、僕は古賀たちを巻き込んで、なにをやっているんだろう。
そんな自己嫌悪に陥っていると、隣からシャッターの音がした。
古賀が海にデジカメを向けている。
「栄治、ちょっと向こうに立って」
古賀の不安そうな横顔が気になって声をかけようとすると、佐伯に呼ばれてしまった。
古賀に声をかけても、僕にできることなんてないだろうから、僕はそのまま佐伯の指示に従って、浜辺を歩く。
後ろから下手くそだの、もっと海に寄れだの、文句が飛んでくる。
言い返すために振り向くと、古賀のつまらなそうな表情が見えた。
僕はあの表情を知っている。
思うように写真が撮れていないときの顔だ。
「佐伯、ちょっと休憩」
僕は佐伯が答えるより先に、足を進める。
「よし、栄治。靴脱いで海に入れ」
波打ち際に近寄った途端、佐伯はいい笑顔で僕に命令した。
「嫌だよ」
撮影に協力するとは言ったけど、海に入るのは抵抗があった。
僕が即答するとわかっていたようで、佐伯は笑いながらカメラの準備を始める。
なにも持っていない僕は、ただ海を眺める。
穏やかな波を見ていると、ハル兄から逃げてきたことを忘れそうになる。
逃げたところで現実は変わらないのに、僕は古賀たちを巻き込んで、なにをやっているんだろう。
そんな自己嫌悪に陥っていると、隣からシャッターの音がした。
古賀が海にデジカメを向けている。
「栄治、ちょっと向こうに立って」
古賀の不安そうな横顔が気になって声をかけようとすると、佐伯に呼ばれてしまった。
古賀に声をかけても、僕にできることなんてないだろうから、僕はそのまま佐伯の指示に従って、浜辺を歩く。
後ろから下手くそだの、もっと海に寄れだの、文句が飛んでくる。
言い返すために振り向くと、古賀のつまらなそうな表情が見えた。
僕はあの表情を知っている。
思うように写真が撮れていないときの顔だ。
「佐伯、ちょっと休憩」
僕は佐伯が答えるより先に、足を進める。