君の世界に触れさせて
 だけど、すぐに止まった。


 あんなにはっきりと写真には関わらないと言っておいて、簡単に声をかけてもいいのか?

 そもそも、どんな言葉をかけるつもりだ?


 僕が自問自答している間に、古賀はもう一度、シャッターを切る。


 ますます古賀の表情は険しくなる。


「納得のいく写真は撮れた?」


 迷っている場合ではないと思った。


 古賀は少し驚いて、僕を見る。


 僕の言葉が信じられないみたいだけど、僕だって、こんな言葉をかけるとは思っていなかった。


 だけど、せっかく写真に興味を持ったのに、上手に撮れなくて辞めてしまうのは、もったいないと思うから。


「……先輩、私に写真を教えたくないって言ったじゃないですか」


 古賀は小さく両頬を膨らませる。


 感動したり、不満そうにしたり。

 こんな感情の動く人、久しぶりに見た。


 ああ、どうして僕は今、カメラを持っていないんだろう。


 海を背景に、向日葵のような笑顔を見せる彼女はきっと、綺麗なのに。

「……教えたくないとは言ってないよ。僕の撮る写真は完全に自己満足の写真だから、参考にはならないだろうなって思っただけだから」


 古賀は不思議そうに、首を傾げた。


「私には、そんなふうには見えませんでした」


 古賀は視線を落として、柔らかく微笑む。
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