君の世界に触れさせて
◇
海から寄り道することなく帰宅すると、すでにハル兄の靴があった。
一気に心臓の音が早くなる。
ここ最近の出来事から、身体が逃げたい衝動に駆られているけど、自分に“逃げるな”と言い聞かせながら、靴を脱ぐ。
リビングが近付いてくると、母さんとハル兄の話し声が聞こえてくる。
「……ただいま」
心臓が動きすぎて、上手く呼吸ができている気がしない。
母さんはいつも通りに「おかえり」と返し、ハル兄は静かに僕を見る。
「おかえり、栄治」
その絶妙な間が、怖かった。
でも、逃げないって決めたから。
ちゃんと向き合って、自由に写真を撮りたいから。
『私、夏川先輩の写真が好きです』
古賀の言葉と、太陽のような笑顔が、僕の心を支えてくれる。
彼女の笑顔を思い出すと、一気に心が落ち着いた。
「ハル兄も、おかえり」
おかげで、僕は自然に、そう返すことができた。
ハル兄は数回、ゆっくりと瞬きをする。
「栄治、なにかいいことでもあった?」
「まあ、少しね。そのことで話があるんだけど、ハル兄、時間ある?」
「まあ、あるけど……」
ハル兄はまだ僕の変化に混乱しているようで、僕と母さん私交互に見ている。
母さんはただ微笑むだけで、なにも言わない。
僕たちのわだかまりには、関わるつもりはないみたいだ。
「じゃあ、僕かハル兄の部屋で話したいんだけど」
「遥哉の部屋にしたら?」
そんなことを思っていたのに、母さんがそんな提案をしてきた。
海から寄り道することなく帰宅すると、すでにハル兄の靴があった。
一気に心臓の音が早くなる。
ここ最近の出来事から、身体が逃げたい衝動に駆られているけど、自分に“逃げるな”と言い聞かせながら、靴を脱ぐ。
リビングが近付いてくると、母さんとハル兄の話し声が聞こえてくる。
「……ただいま」
心臓が動きすぎて、上手く呼吸ができている気がしない。
母さんはいつも通りに「おかえり」と返し、ハル兄は静かに僕を見る。
「おかえり、栄治」
その絶妙な間が、怖かった。
でも、逃げないって決めたから。
ちゃんと向き合って、自由に写真を撮りたいから。
『私、夏川先輩の写真が好きです』
古賀の言葉と、太陽のような笑顔が、僕の心を支えてくれる。
彼女の笑顔を思い出すと、一気に心が落ち着いた。
「ハル兄も、おかえり」
おかげで、僕は自然に、そう返すことができた。
ハル兄は数回、ゆっくりと瞬きをする。
「栄治、なにかいいことでもあった?」
「まあ、少しね。そのことで話があるんだけど、ハル兄、時間ある?」
「まあ、あるけど……」
ハル兄はまだ僕の変化に混乱しているようで、僕と母さん私交互に見ている。
母さんはただ微笑むだけで、なにも言わない。
僕たちのわだかまりには、関わるつもりはないみたいだ。
「じゃあ、僕かハル兄の部屋で話したいんだけど」
「遥哉の部屋にしたら?」
そんなことを思っていたのに、母さんがそんな提案をしてきた。