君の世界に触れさせて
 はっきりと言葉にすると、一気に自覚してくる。


 心拍数が上がり、顔が熱い。


 自分でもわかるほどの反応をしてしまったから、またからかわれてしまうと思ったのに、ハル兄はなにも言わない。


 それどころか、なぜか、ハル兄のほうが恥ずかしそうにしている。


「やっぱり、兄弟で恋愛話はないな」


 ハル兄が噂の真偽を曖昧にでも聞いてこなかったのは、その考え方があるからなのかもしれない。


 僕としては、この話題が終わってくれるならなんでもよくて、適当に頷く。


「話を戻すけど、写真を撮りたいなら、好きに撮ればよかっただろ」
「それはそうかもしれないけど……」


 次々に本心をさらけ出していかなければならない時間に、そろそろ耐えられなくなる。


 でも、まだハル兄は逃がしてくれなさそうだ。


 純粋にそれについて知りたいという目をして、僕を見ている。


「僕は、僕の写真で誰かが喜んでくれるのが、一番嬉しかったんだ。だからこそ、あのとき僕の写真で、誰かに嫌な思いをさせるような噂が流れてしまったことが嫌だったし、それがハル兄だったっていうのも、耐えられなかった」


 なにより、ハル兄はいつも、花奈さんの写真を見て微笑んでいたのに、あのときだけは、苦しそうにしていた。
< 38 / 151 >

この作品をシェア

pagetop