君の世界に触れさせて
 音が聞こえたほうを向くと、夏川先輩が私たちにカメラを向けている。


「栄治、それ送れよ」


 夏川先輩の後ろから現れた黒髪のクールそうな人が、命令をした。


「わかってるよ」
「相変わらずの独占欲ですね」


 夏川先輩も佐伯先輩も自然に話しているけど、雰囲気と格好から、近寄り難いと思ってしまう。


「今来たのが、私の彼なの」


 柚木先輩は可愛らしい表情のまま、私たちに聞こえるように囁いた。


「あの人が?」


 思わず声に出してしまって、私は口を塞ぐ。


 柚木先輩が微笑んでいるから、その優しさに救われたと思った。


「いや、あの、悪い意味じゃなくて、美男美女でお似合いだなって思って」


 慌てて弁明すると、柚木先輩はますます笑顔になる。


「ありがとう、依澄ちゃん。すごく嬉しい」


 本当に、優しさの象徴みたいな人だ。


 私と同じように素直な人なのに、私とは全然違って、なんだか泣きたくなってしまう。


「よし、じゃあ行きますか」


 メンバーが揃ったということで、佐伯先輩の声掛けにより、私たちはボウリング場に向けて出発した。


「そうだ、提案」


 先頭を歩く佐伯先輩が手を挙げた。


「男女で分かれて、勝負しませんか」
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