君の世界に触れさせて
 今いるお客さんたちが倒すピンの音が聞こえてくる。


 その大きな音に少し怯え、きっと二人揃って、物珍しいものを見ているような反応をしていることだろう。


「依澄ちゃん、咲楽ちゃん、ここに名前書いて。あだ名でもいいよ」


 柚木先輩に手招きされ、柚木先輩が指すところを見ると、すでに『カナ』と書いてある。


 私はその下に『いずみ』、咲楽は『サクラ』と書いた。


 ゲーム代を支払って、靴を借りて、ボールを選ぶ。


「重た……」


 咲楽が呟くのに頷き、私も咲楽も両手でそれを運ぶ。


 新しい体験だらけで、まだ本番ではないのに、楽しくなってくる。


 咲楽も同じらしく、私たちは顔を見合せて笑う。

「そうそう、遥哉くんたちの隣のレーンにしてもらったから」


 柚木先輩の進む先には、もう準備を終えた男子三人がいる。


 遥哉先輩の容姿、雰囲気は女子の視線を誘うもののようで、柚木先輩は若干不服そうにしながら、隣のレーンに進む。


 柚木先輩がしたようにボールを置き、頭上にある画面を見ると、私は目を疑った。


「ナツカワ1、2、3……?」


 読み上げてなお、わからない。


「もう、佐伯くんは夏川じゃないでしょ」
「だって、二人とも名前決め面倒だからって、苗字にして、そしたら俺だけ仲間はずれになるんだよ? そんなの、嫌じゃん」
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