君の世界に触れさせて
 柚木先輩は笑い流して、前を向いて歩く。


「俺は許さないけどな」


 後ろから恐ろしい声が聞こえる。


「だから、あれは僕がお願いして飾ってもらったんじゃないんだって」


 夏川先輩が言うと、遥哉先輩も柚木先輩と同じように穏やかに笑う。


 夏川先輩は二人のイタズラに困ったように笑うけど、私はますます話が見えなくて、聞きたくなる。


 でも私が触れてもいい話題なのかわからなくて、ただ夏川先輩たちのやり取りを見ることしかできなかった。


 すると、夏川先輩は私の視線に気付いてしまった。


 目が合ってからすぐに逸らしたものの、きっと意味がない。


「去年の文化祭の、花奈さんの写真、覚えてる?」


 あんなにも強烈に一目惚れをしたのだから、忘れるはずがない。


 ただ、どうしてそんな確認をしてくるのかわからなくて、ぎこちなく頷いた。


「あれ、ハル兄が後輩に告白されてるところを見つけた花奈さんなんだ」


 一気に腑に落ちた。


 どうして一枚目が不安そうな横顔だったのか。

 さっきの柚木先輩のセリフもそう。


 恋人が告白されていて、不安にならないほうが無理な話だろう。
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