君の世界に触れさせて
 そして、その瞬間を写真に取られるのも、いい気がしないはず。


「あの写真は、ハル兄に見せて終わりだったはずなんだけど、矢崎先生……写真部の顧問に見られちゃって。いい写真だから飾ろうって言われて、断れなかったんだ」


 掲示しようと提案してくれた矢崎先生には感謝したくなる。


 だけど、この流れからしてきっと、飾らないほうがよかった写真なのだろう。


「それで花奈さんに許可を取ったらいいって言われて、掲示することになった。あれが、人前に初めて出した花奈さんの写真なんだ」
「初めて?」


 夏川先輩なら、何枚も柚木先輩の写真を撮っていそうだったから、それは意外だった。


 夏川先輩は後ろと前に視線を動かしたあと、若干私との距離を縮めてきた。


 その距離感に、変に緊張する。


「花奈さんのはハル兄、ハル兄のは花奈さんにだけ見せていたから」


 夏川先輩は右手の人差し指を自分の唇に当てる。


「だから、“許さない”なんですね」


 夏川先輩につられて、私も小声で返す。


「そういうこと。ダメって言われるのがわかってたから、ハル兄には言わなかったんだよね」


 夏川先輩の横顔は後悔しているように見える。
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