君の世界に触れさせて
夏川先輩が抱えている過去がこれだけではないと言っているように思えたけど、触れるのは怖くてできなかった。
私は歩きながら、駅での会話を思い返した。
『私ね、栄治くんの写真が好きなの。だから、また見れるのが嬉しくて』
「あれ……もしかして、柚木先輩が好きって言った写真って……」
「僕が撮るハル兄の写真だと思うよ。ほら、ハル兄ってびっくりするくらいクールでしょ? でも僕は、そんなハル兄の自然な表情をよく撮ってたから」
どうして夏川先輩に“先輩の写真が好きだ”と伝えないのかとモヤモヤしたけど、それは確かに、個人的な欲で、言えなかったのだろう。
「お礼を言ったのも、ハル兄の写真が見れるからだろうね。カメラを一切触らなかった時期、当然、ハル兄の写真も撮ってなかったから」
少し前の夏川先輩と同一人物とは思えないほど、夏川先輩はなんとも思っていない様子で、写真を撮らなかったことを言った。
なにが夏川先輩を変えたのかとか、どうして写真を撮らなかったのかとか、気になることはいくつかあった。
だけど、やっぱり私は聞けなかった。
私は歩きながら、駅での会話を思い返した。
『私ね、栄治くんの写真が好きなの。だから、また見れるのが嬉しくて』
「あれ……もしかして、柚木先輩が好きって言った写真って……」
「僕が撮るハル兄の写真だと思うよ。ほら、ハル兄ってびっくりするくらいクールでしょ? でも僕は、そんなハル兄の自然な表情をよく撮ってたから」
どうして夏川先輩に“先輩の写真が好きだ”と伝えないのかとモヤモヤしたけど、それは確かに、個人的な欲で、言えなかったのだろう。
「お礼を言ったのも、ハル兄の写真が見れるからだろうね。カメラを一切触らなかった時期、当然、ハル兄の写真も撮ってなかったから」
少し前の夏川先輩と同一人物とは思えないほど、夏川先輩はなんとも思っていない様子で、写真を撮らなかったことを言った。
なにが夏川先輩を変えたのかとか、どうして写真を撮らなかったのかとか、気になることはいくつかあった。
だけど、やっぱり私は聞けなかった。