君の世界に触れさせて
 古賀なら大丈夫だろうと思うくせに、心配が消えない自分がいた。


「……篠崎が、違うならちゃんと否定しろって怒ってたよ。あと、ちゃんと話を聞かなくてごめんって」
「そう……」


 古賀のことが気になって、僕は半分、それを聞き流してしまった。


 それからその場に留まる理由もないので、後ろ髪を引かれる思いで、荷物を取りに、写真部の部室に向かう。


「で、どうする? 撮影係やる?」


 やりたい気持ちは消えていない。


 だけど、さっきの篠崎さんの反応を思い出すと、引き受ける勇気がなかった。


「いや……やっぱり、やめとくよ。篠崎さんみたいな人もいるだろうし」


 否定しなかった僕が悪いのはわかってる。

 これから否定していけばいいこともわかる。


 だけど、その規模を考えるとクラスマッチに間に合うか怪しい。


 みんながみんな、篠崎さんみたいにすぐにわかってくれるとも限らないと思うと、余計に。


「……学校で古賀ちゃんを撮るチャンスなのに」


 佐伯は小声でそんなことを零した。


 ああ、そうか。

 この役を引き受けなかったら、僕は学校行事を楽しむ古賀の写真を残せないのか。


 その場面を見れば、撮りたくなるに決まっているのに。


 いや、古賀だけじゃない。

 七瀬さんや篠崎さんたち、みんなの写真だって残したくなるだろう。
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