君の世界に触れさせて
咲楽は散らかした道具を片付けながら言う。
「いや、今からスポーツをするのに、ピン留めを使うのは危ないから」
私がそう言ったことで落ち込む咲楽を見て、私はまたやってしまったのだと思った。
指摘をするより先に、ありがとうくらい言えばよかった。
「あの、咲楽、その……嫌だったわけじゃなくて」
「わかってる」
しどろもどろに伝えようとしていると、咲楽にはっきりとした声で遮られた。
咲楽はさっきの位置に立つと、私の髪に触れ、ピン留めを取った。
「なんで私、そこまで考えが至らなかったんだろう。完全に浮かれすぎた。ケガするほうがイヤだよね」
髪が解かれるのは速く、あっという間に私の前髪が戻ってくる。
そして咲楽は私の横に立って、髪を結んでいく。
「ごめんね。ありがとう、咲楽」
さっきは言えなかった言葉を伝えると、頭上から咲楽の照れ笑いが聞こえてきた。
右側を結ぶと、今度は左側に移動する。
「依澄、今日は楽しもうね」
その気持ちを押し付けるような言い方ではなく、そうなったら素敵だね、と言っているようで、私は小さく頷いた。
「よし、完成。依澄、記念写真撮ろう」
「いや、今からスポーツをするのに、ピン留めを使うのは危ないから」
私がそう言ったことで落ち込む咲楽を見て、私はまたやってしまったのだと思った。
指摘をするより先に、ありがとうくらい言えばよかった。
「あの、咲楽、その……嫌だったわけじゃなくて」
「わかってる」
しどろもどろに伝えようとしていると、咲楽にはっきりとした声で遮られた。
咲楽はさっきの位置に立つと、私の髪に触れ、ピン留めを取った。
「なんで私、そこまで考えが至らなかったんだろう。完全に浮かれすぎた。ケガするほうがイヤだよね」
髪が解かれるのは速く、あっという間に私の前髪が戻ってくる。
そして咲楽は私の横に立って、髪を結んでいく。
「ごめんね。ありがとう、咲楽」
さっきは言えなかった言葉を伝えると、頭上から咲楽の照れ笑いが聞こえてきた。
右側を結ぶと、今度は左側に移動する。
「依澄、今日は楽しもうね」
その気持ちを押し付けるような言い方ではなく、そうなったら素敵だね、と言っているようで、私は小さく頷いた。
「よし、完成。依澄、記念写真撮ろう」