君の世界に触れさせて
 私たちは壁際に寄って、クラスメートが集まっている舞台側に移動する。


「私たちの試合って、一試合目だったよね」
「うん。たしか、二年と戦う」
「先輩か……ちょっと怖いけど、頑張ろうね」


 私は会話に入れなかった。


 バスケがイヤだという気持ちのせいで、今日までチームメイトになることすらできていなかった。


「依澄、私の活躍を見逃さないでね」


 疎外感を抱いている私に気付いたのか、咲楽は私にそう言った。


 今日の咲楽は、ちゃんとスポーツ仕様だ。


 気合いが入っているらしい。


「もちろん。頑張ってね」


 補欠である私にできることは、そんな咲楽を応援することだけだった。


 それからすぐに、コートに集まるように指示が出て、咲楽たちはコートに入る。


 コート中心に背の高い二人が並び、笛の合図とともに、審判がボールを真上に投げた。


 ジャンプボールは、二年生に取られた。


 ボールを取った先輩がドリブルをして攻めてきて、一年生チームはそれを邪魔する。


 そしてシュートは失敗し、跳ね返ったボールを咲楽が取った。


「咲楽、ドリブル! 攻めて!」


 大きな声なんて、久しぶりに出した。
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