君の世界に触れさせて
 写りが悪いからとかではなく、怖いから。


 それはそうだろう。

 何人いたのかは知らないが、ただでさえ攻撃力の高い人たちから集中攻撃をされたら、トラウマものだ。


 古賀があんなに嫌がっていたのも、当然の話だ。


「じゃあ僕は、古賀に相当嫌な思いをさせてたんだね……」
「いや……多分だけど、夏川栄治に撮られるのは、嫌じゃなかったと思う」


 いくら氷野の言葉でも、さすがに信じられなかった。


 写真を撮られることにトラウマを抱いている人が、そう簡単に克服できるとは思えない。


「見てなかったの? ボウリングのあと、夏川栄治の写真を確認する依澄。すごく嬉しそうだったでしょ」


 氷野は逆に、僕が素直に受け止めなかったことが信じられなかったらしい。


 言われてみれば、素直な古賀が、あのときは言葉を濁してスマホを返してきた。


 少しは、氷野の言ったことを信じてみてもいいのかもしれない。


 氷野はため息をつきながら、視線を戻した。


「で、話を戻すけど……まあその中には、依澄を落としたい人もいたわけで。『下手くそ。レギュラーになれたなのは運でしかない。もっと練習したら?』こんな、最低な言葉を平気で投げる奴もいた」
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